重松 清 とんび。 とんび 重松 清:文庫

重松清『とんび』感想・レビュー~電車の中で読んでしまった私は本当に大バカ者だよ~

重松 清 とんび

重松清『とんび』(角川文庫) つらいときは、ここに帰ってくればいい。 昭和37年、ヤスさん28歳の秋、長男アキラが生まれた。 愛妻・美佐子さんと、我が子の成長を見守る日々は、幼い頃に親と離別したヤスさんにとって、ようやく手に入れた「家族」のぬくもりだった。 我が子の幸せだけを願いながら悪戦苦闘する父親の、喜びと哀しみを丹念に描き上げた、重松清渾身の長編小説。 (重松清の文体をマネているつもり) 重松作品は奥が深い。 強烈な一発パンチではなく、小刻みにジャブをくりだしてきます。 そのジャブは、的確で鋭いものです。 重松作品の原点は、「女性自身」の特集「シリーズ人間」の原稿を書いていた時代にあります。 このシリーズは長期連載として評判を呼びました。 若き重松清はこのシリーズのアンカーマン(最終仕上げ役)になることが夢でした。 苦労している人間。 がんばっている人間。 重松清のやさしい眼差しは、そこに寄り添い併走するところにあります。 それは「女性自身」のライター時代にはぐくまれたものなのです。 重松清は1991年『ビフォアラン』(現在、幻冬舎文庫。 それ以降一貫して、がんばる人間模様を描きつづけています。 そして『とんび』(角川文庫)によって到達点に達しました。 北海道の友人からは、「おまえには読むすべもないだろうけれど『とんび』はいいぞ」と、からかうようなメールが届いていました。 私が熱烈な重松清の追っかけであることを、承知してのメールでした。 単行本になると同時に読みました。 泣いた。 笑った。 声援をおくった。 どやしつけた。 主人公のヤスさんは、自分を生んだ直後に実母を亡くしています。 実父は再婚して行方知れずの状態で、伯父夫妻に育てられました。 そして彼は同じような境遇に生まれ育った美佐子さんと結婚し、アキラという子どもを授かっています。 ヤスさんが勤める運送会社は、瀬戸内海に面した広島県備後市にあります。 時代は1962(昭和37)年。 日本が高度成長にわいているころです。 不器用で、一本気で、照れ屋で、いい加減で、やさしいヤスさんは、幼馴染や職場の人や近所の人などに囲まれて、楽しい毎日を送っていました。 アキラは両親の愛情シャワーを一身にあびて、すくすくと成長します。 平和な日常が突然崩壊します。 読者はこの場面から、重松清に涙のシャワーをあびせかけられることになります。 シングルファザーになった、ヤスさんの奮戦。 アキラの成長。 読者はいつのまにかヤスさんにかわって、アキラに寄り添って走っていることに気づかされます。 /ただし不器用さをシブさにしてはいけない、と自分でルールを決めた。 /寡黙であるよりは間の抜けた饒舌を選んでしまう父親がいい。 堪え忍んで動かないことよりも、むしろ暴走して空回りしてしまうことのほうに、父親の「男」を背負わせたい。 正しさではなく愚かしさで愛されるひとであってほしいし、強さではなく熱さで我が子を愛し抜くひとであってほしい。 重松清はこんなイメージを描いて、ヤスさんを造形しました。 大成功だったよ、と伝えたいと思います。 私はこの作品を少なくとも10人にはプレゼントしています。 私が大好きな人たちに、読んでもらいたい。 そんな思いにさせられた作品に出あったのは、久しぶりのことでした。 重松清作品のなかでお薦めは、ずっと『ナイフ』『エイジ』(ともに新潮文庫)でした。 現代日本文学(戦後生まれの作家)ベスト125のなかに、さらに『とんび』を追加できることを、とても誇らしく思います。 いずれも重松清の「セカンド・ネーム」です。 重松清は、とことんセカンド・ネームでの発信にこだわっています。 直木賞を受賞しても、このスタンスは変わっていません。 『セカンド・ライン』(朝日新聞社)は、そうした文章だけを集めたものです。 23歳のときに「女性自身」にかかわって以来、著者は一貫して2つの道を歩みつづけています。 「ファスト・ライン」の作品しか知らない読者には、ぜひ『セカンド・ライン』を読んでいただきたいと思います。 「あしたのジョー」「ドラえもん」「浜崎あゆみ」など、ファスト・ラインでは読むことのできないテーマの文章が、全部で百編も収載されています。 重松清『セカンド・ライン』は残念ながら、文庫化されていません。 しかし重松清ファンなら読んでおくべきなので、あえて紹介させていただきます。 本書には重松作品の原点になっている、エッセイが満載されているからです。 (山本藤光:2011. 28初稿、2018. 02改稿).

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とんび 重松 清:文庫

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重松清の自身の父親への答礼歌。 ここでも当然いつもの重松節。 安定しているというか、プロフェッショナルというか。 物語は最初の一章を読んだところで、ほぼ最後までプロットが想像できるし、またその通りに進行して 重松清の自身の父親への答礼歌。 ここでも当然いつもの重松節。 安定しているというか、プロフェッショナルというか。 物語は最初の一章を読んだところで、ほぼ最後までプロットが想像できるし、またその通りに進行してゆく。 あたかも「フーテンの寅さん」か、「水戸黄門」のように。 それでも「ヤスさんの上京」での海雲和尚の手紙には涙がこぼれそうになる。 (実はこぼれたのだが)思いっきり通俗的と思いつつも。 うまいと思ったのは「由美さん」の章。 実に巧みに変化球を投じながら、物語の収束に向けて加速させていくテクニックは、さすがに見事だ。 重松さん初級者ですが、この本は今までで一番相性の合うお話でした。 重松さん初級者ですが、この本は今までで一番相性の合うお話でした。 愛情というものは鼻を突き合わせている時は深く激しいほど疎ましくすら思えるのに、ひとり遠く離れて見て初めて陽炎のように立ちあがって有り難みが見えてくるものでもあります。 子供や孫を視野に入れて漸く見えてくる数十年前の親心もあります。 言葉にすべきことと冥途まで黙って抱えて行くことも含めて愛情表現は千差万別で未だに正しく伝える上での迷いの多さを断ち切れぬ私は自分の中のやしゃんに激しくシンパシーを感じました。 オススメです。 お互いに天涯孤独のヤスさんと美佐子さん夫婦。 二人に長男のアキラが生まれ人生の幸せを噛み締めるヤスさん。 職場での突然の事故で美佐子さんが急逝し、ヤスさんとアキラの親一人、子一人の奮闘の毎日が始まる。 不器 お互いに天涯孤独のヤスさんと美佐子さん夫婦。 二人に長男のアキラが生まれ人生の幸せを噛み締めるヤスさん。 職場での突然の事故で美佐子さんが急逝し、ヤスさんとアキラの親一人、子一人の奮闘の毎日が始まる。 不器用で照れ屋なヤスさんのひた向きなアキラへの愛情。 そして二人を取り巻く人々の沢山の愛情にふれ、何度も泣かされる。 これはアキラの成長とともにヤスさんの成長の物語でもあると思う。 様々な事柄に悩むヤスさんとアキラ。 彼らを沢山の「手」が支えてくれ、二人は成長すり。 不器用ながらも懸命に生きる人々の姿が心に響く作品です。

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【重松 清】おすすめ小説!売れ筋人気ランキング名作ベスト10はこれ!

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「父の本」 埼玉県 ラジオネーム お茶屋のさとし 「とんび 」 重松清 ・この本のおススメどころ 昭和イザナギ景気の頃から始まる不器用な父と子の物語です。 まっすぐで博打好きなヤスさん その妻の美佐子さんに子供が宿るところから始まります。 子供の為に好きな酒、博打を断ち、小林旭が好きなことから子供に『アキラ』と名付けます。 ある事からヤスさんは男手ひとつで子育てをします。 人から慕われるヤスさんは周りからも助けられ、不器用ながらもアキラくんと一緒に成長をしていきます。 アキラくんを苦しませないための〈優しい嘘〉思春期の難しい時期の息子との接し方、男2人での暮らし方。 思春期って親がウザかったり、何でもない事で衝突したりなんて日常的な事です。 私も2人の子がいますが、子育てなんて自分の思うようにはならないのが自分でも実感したところです。 そして、やはりそこは 一本気なヤスさん オロオロと戸惑います。 男臭いヤスさん、そしてそこが人間臭くて、読みながらも「うんうん、そうなんだよなあ」と頷く事しきりでした。 そして、何よりもこの小説の優しさを感じ取れたのが、三人称で語られる文章が、主人公とその妻を称する時「ヤスさん」「美佐子さん」と柔らかな口調で語られている事でした。 それだけでも全体にふんわりとした暖かさが漂うようです。 瀬戸内の街を舞台にしたこの物語、成長したアキラくんの進学問題、揺れるヤスさんの心情は 同世代の息子を持つ私も共感を覚えました。 ・お茶屋のさとしさんのお父さんとの思い出 私の父は自営業でしたが、朝から酒を飲んでしまうような人でした。 飲まなきゃ無口で大人しいのが、ご多聞に漏れず ひとたび酔うと、くどく面倒くさいオヤジでした。 当然衝突ばかりでしから、こんなヤスさんのような父親像に憧れつつ、自分が父になったら そんなふうに接しなければ と思っていたものでした。 私自身 父との確執が深まるばかりで、この場で説明すると かなりの時間を要してしまうので割愛しますが、反面教師として学ぶべき所は多かったように思います。 家族との接し方 声のかけ方 気にかける事 支える事 食べさせる事 父として『やってはいけない』事は沢山教わった気がします。 ……なんて つい偉そうに上から ものを言ってしまいましたが、それでも育ててくれ、決して不幸などではない環境だった事は確かなのです。 それだけでも大いに感謝をしています。 ある事から私たちの前から姿を消してしまった父ですが、今は恨んでなどいません。 この本を読んで小さな頃からの父との思い出を噛み締めながら、 ほんのちよっぴり、自分も気持ちが優しくなれる小説でした。 38歳・秋。 その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。 時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。 西島秀俊と香川照之のW主演 ・あすなろ三三七拍子 2014年7月 45歳の中年サラリーマン・藤巻大介が、廃部の危機に陥った翌檜(あすなろ)大学の応援団団長に同大学OBの社長からの命令で就任、応援団の再建に賭けた悪戦苦闘を描く青春群像劇。 主演 柳場敏郎 ・エイジ 2000年7月 東京近郊のニュータウンに住む中学2年生のエイジ(高橋栄司)の日常生活を通し、連続通り魔を実行した同級生、挫折したバスケットボール、好きな女の子、元親友への想いをリアルに描く。 第12回山本周五郎賞を受賞 元カトゥーン 田中聖(たなかこうき) ・卒業ホームラン 2011年3月 少年野球チームに所属する智は、こつこつ努力しているのにいつも補欠の六年生。 主演 船越英一郎 ・その日の前に 2008年映画化 2014年テレビドラマ化 僕たちは「その日」に向かって生きてきた 男女が出会い、夫婦になり、家族をつくって、幸せな一生なのか。 消えゆく命の前で、妻を静かに見送る父と子。 南原清隆(2008) 佐々木蔵之介 2014 ・定年ゴジラ 2001年 大手銀行に42年間勤め定年を迎えた主人公の山崎さんの、定年してからの日々と仲間たちとの交流、そして家庭の中で自分の「居場所」を見つけるまでの苦悩を描く。 題名は、「定年」を自分の中でどう受け入れるか、戸惑い、悩む定年仲間たちが開発当初の団地の模型を踏み潰すシーンから名づけられた。 長塚京三.

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