肝硬変 死に際。 父の介護と母の看取り。「終末期鎮静」という選択。(2)

エッセイ−臨終

肝硬変 死に際

病気で死ぬ人は、みな目を閉じてお決まりのようにガクッと死ぬ。 殺人のシーンでも、大方は目を閉じて死んでゆく。 たまに、眼をカッと見開いて壮絶な死を演出する場面もあるのだが。 だから通常人が死ぬ場合は、みんな目を閉じて死ぬものだと思っていた。 その常識だと思っていたことが、最近になって覆 (くつがえ)った。 冠婚葬祭会社に勤める作家の青木新門氏は、永年死者の湯灌 (ゆかん)や納棺に携わり、数多くの死者を見つめてきた。 自著『納棺夫日記』の中で、死者の顔について触れている部分がある。 そこには、死者の生きている間の善行や悪行、信仰心の有無にかかわりなく、「死者の顔はみんな同じように安らかな相をしている。 死んだままの状態の時などは、ほとんど眼は半眼の状態で、よくできた仏像とそっくりである」と述べている。 私が臨終の場面に出くわしたのは、これまでに一度しかない。 大学を卒業し、就職したばかりの年に、父が肝硬変で死んだ。 それまで一週間ほど軽眠状態であった父が、突然、大きな鼾 (いびき)をかき出した。 眼は半眼であり、その瞳にはもう何も映ってはいなかった。 そんな状態が二時間ほど続いて、突然父の鼾が止まった。 断末魔の苦しみが父を襲い、大声を張り上げ両腕を伸ばして宙をもがくのではないかと恐れた。 そのとき病室にいたのは、私のほかに母と妹、看病の手伝いに来てくれていた伯母と、面会謝絶もお構いなしに見舞いに来ていた父の友達の五人であった。 誰もが固唾を呑んで父を見守った。 だが父は、山の上で大きく深呼吸でもするかのように、気持ちよさそうに長い息をフーッと吐いた。 身体のどこにそんな息が入っているのかと思うほど、吸うことなしに長く吐き続けたのである。 それが三度も続き、三度目の吐息とともに父の器官は静かに停止した。 まさに「息を引き取る」という言葉どおりの最期であった。 その光景を見ながら、親というものは、最後の最後に身をもって子に「死」というものを教えるものなのだなと思った。 不思議と悲しみはなかった。 これでやっと父が楽になれたという安堵感に包まれていた。 臨終を告げ医者が病室から出て行った後、看護師が死者の処置をするのだが、それまでの間、家族にお別れの時間を僅 (わず)かにくれる。 父の胸元で母と妹が泣き崩れている。 私は父の足元の方に立ったまま涙を拭いていた。 ふと父の顔に目をやると、死ぬ前の顔と後の顔がずいぶんと違うことに気づいた。 死後の顔は、顔の両側に頬の肉が引っ張られているように感じられた。 筋肉の弛緩 (しかん)によるものだろうが、私の知る父の顔ではなく、蝋 (ろう)人形のような顔であった。 その顔をよく見ると、眼が見開いたままなのである。 思わずギョッとした。 「穏やかな死に顔」という言葉が、脳裏を過ぎったのだ。 父の死に顔が穏やかなのかどうか、二十三歳の私には理解できなかった。 とにかく瞼 (まぶた)を閉めなければと思い、テレビドラマで医者や家族がするように、手のひらで父の瞼をなぞったのだが、父の目は容易に閉じなかった。 そこで少し力を入れて瞼を閉めてみたが、手を離すとすぐにまた開くのである。 そんなことを何度か繰り返しながら、私は焦 (あせ)りはじめていた。 この作業は、テレビドラマだと医者がするのではないか。 なぜ、放置して出て行ったのだ、と。 このままだと、通夜や葬儀で父の死に顔を見た人が「なんて安らかな顔でしょう」というどころか、見開いた眼を見てギョッとするに違いない。 私は考えた末に父の額の上に手を置いて、眉毛の方に力を入れるようにして十分ほどそのままの状態を保った。 父はやっと眼を閉じてくれ、ひと安心したのである。 今回、青木新門氏の文章に触れ、初めて臨終直後の人が半眼の状態であることを知り、胸の痞 (つか)えが取れたのである。 この二十六年間、父は苦しみのあまり眼を開けて死んだのではないだろうかと、折につけ思い返すことがあったのだ。 父との病室での「お別れ」の後、看護師の処置が終わって再び病室に入ると、鼻と耳に脱脂綿を詰めた父がベッドに横たわっていた。 口の中や肛門にも脱脂綿が詰められているのだろうと思った。 三十分ほど廊下で待たされていた間、看護師によって父の剥製 (はくせい)が作られていたのだ。 その結果、父は「仏様」と呼ばれる存在になっていた。 平成二十一年七月 大暑 小 山 次 男 追記 平成二十二年一月 加筆.

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肝臓がんの最後を教えて下さい (切実です)

肝硬変 死に際

肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業参加者証の有効期間の延長について 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和2年3月1日から令和3年2月28日の間に有効期間が満了する参加者証(ただし、交付年月日が令和2年5月1日以降の参加者証は延長の対象外)については、有効期間を 1年延長します。 (現在お持ちの参加者証を引き続き使用することができます。 ) 詳細については、下記の通知文(案)をご参照ください。 この事業による助成を受けるためには、参加者証が必要です。 参加者証のをご覧ください。 指定医療機関の概要等については、をご覧ください。 府内の指定医療機関については、国立国際医療研究センター肝炎情報センターが運営するで検索できます。 府の他の事業における指定医療機関や肝炎専門医療機関等とは異なります。 なお、申請にあたっては、治療研究事業への参加について、同意していただくことが必要です。 対象者 次の要件をすべて満たす方が対象となります。 1 住民票の住所が大阪府内である方。 2 B型・C型肝炎ウイルスによる肝がん・重度肝硬変と診断され、かつ、を満たしている方。 3 本事業に協力し、臨床情報を提供し、活用されることに同意する方。 4 各種健康保険の被保険者またはその扶養者であること。 5 世帯年収が約370万円未満であって、下表の年齢区分に応じて、それぞれ同表の階層区分に該当する方。 年齢区分 階層区分 70歳未満 医療保険者(介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第7項に規定する医療保険者をいいます。 )が発行する限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証の所得額の適用区分がエ又はオに該当する方 70歳以上75歳未満 医療保険者が発行する高齢受給者証の一部負担金の割合が2割とされている方 75歳以上(注) 後期高齢者医療被保険者証の一部負担金の割合が1割とされている方 (注)65歳以上75歳未満であって、後期高齢者医療制度に加入している者のうち、後期高齢者医療被保険者証の一部負担金の割合が1割とされている方を含みます。 対象となる医療 肝がん・重度肝硬変による入院医療(=肝がん・重度肝硬変入院関係医療)の自己負担額が高額療養費算定基準額を超える月が、過去1年間において3か月以上ある場合、指定医療機関に入院した4ヶ月目以降の入院医療費の自己負担限度額を1万円に軽減します。 ・たとえば、肝がんの手術については、肝切除術、肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法、血管塞栓術等をいいます。 また、肝がんの薬剤等については、化学療法剤(ミリブラチン、ソラフエニブ等)、鎮痛薬(モルヒネ等)をいいます。 ・重度肝硬変の手術については、食道・胃静脈瘤手術、内視鏡的胃・食道静脈瘤結索術等をいいます。 また、重度肝硬変の薬剤等については、肝性浮腫・腹水、難治性腹水等の病名があり、トルバブタン等を使用している場合、肝性脳症の病名があり、慢性肝障害時における脳症の改善の効能効果を有する薬剤を使用した場合をいいます。 ・ たとえば、入院基本料、血液検査、画像検査(腹部超音波、CT/MRI検査等)、病理検査、薬剤管理料をいいます。 助成対象とならない医療 下記に該当する医療は、本事業の助成の対象となりませんので、ご注意ください。 月額自己負担額を超え高額療養費負担額までを公費負担します。 5.患者さんの後期高齢者医療被保険者証の写し 6.限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証の写し 申請窓口 申請窓口は、患者さんがお住まいの地域を管轄するです。 大規模災害の被災者に係る公費負担医療の取扱いについて 厚生労働省から示されている地震や台風等の 新型コロナウイルス感染症に係る公費負担医療の取扱いについて 厚生労働省から示されている このページの作成所属.

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肝性昏睡(かんせいこんすい)とは

肝硬変 死に際

かつては治療が非常に困難といわれてきたですが、近年は少しずつ治療できる病気になりつつあります。 肝硬変になってしまった場合の予後(治療後の状態の経過)、余命(残された寿命)はどのように考えるのでしょうか。 湘南藤沢徳洲会病院の岩渕省吾先生にお話をお伺いしました。 肝硬変の予後とChild分類の歴史 これまで一般的には「になったらおしまい、余命幾ばくもない」などとの印象が強く、とても肝硬変の診断を口にすることすらできませんでした。 肝臓病で通院の患者さんには、肝硬変恐怖症ともいえる方が多く、いまだにその傾向は残っています。 これまで肝硬変の予後については、別記事「」で紹介した「Child分類」が予測のために重要な目安として使われてきました。 このChild分類は、簡便かつとても優れた分類であり、今なお肝硬変の残された機能(予備能)の目安として、世界共通に用いられています。 ただし今後は、このChild分類が肝硬変の予後を必ずしも規定するものにはならないと考えます。 Child分類は今や予後や余命を考えるための絶対的指標ではない かつてChild分類が絶対的であったのは、は治らない病気だったからです。 しかし、肝硬変の原因として多いウイルスの治療法が次々と出てくる中で、Child分類は、必ずしも予後や余命を考えるための絶対の指標というわけではなくなりました。 そのときの肝硬変の程度、肝予備能を表すものとなったのです。 現在では、Child指標にしたがって「どの程度の手術ができるか」「合併症の治療はどこまでできるか」「生活状況をコントロールできるか」という観点で予後を考えていきます。 たとえば、ChildのB程度までの場合、たとえ患者さんが肝硬変になっていても、ウイルスが消えれば予後はかなり良くなります。 C型肝炎の治療にもChild分類が使われる また、の治療の際にもこのChild分類が指標として使われます。 このように、C型肝炎の治療をする際に参考にすることはあります。 肝硬変の予後や合併症など 肝硬変の予後を左右するのは肝臓がん、消化管出血、肝不全といった合併症を発症するか 今やウイルスの90%以上を除去することが出来る時代になってきました。 これからの時代、予後を左右するのはこれらの「合併症」です。 現在では、「」「消化管の出血」「肝不全」の3つがの患者さんの予後を大きく左右すると言われています。 なかでも、肝臓がんの合併は最も予後に影響します。 日本の肝硬変の患者さんの大多数は、亡くなるときに肝臓がんを合併しています。 C型肝炎ウイルスがなくなると肝臓がん発症率も下がる しかし通院が必要 かつては、「ウイルスが消えたらが現れなくなるのではないか」と言われていました。 つまり100人に10人に肝臓がんができていたところ、100人あたり4人に減るということです。 ただ、ウイルスがいなくなれば肝臓がんはもっと減るのではないかと考えられていました。 実際半分以下まで減ってはいますが、やはり十分に注意を払い、ウイルスが消えたあとも通院は継続する必要があります。 また、「肝臓がんはどのような人にできやすいのか・できにくいのか?」という問題は、長期にわたり学会で検討されてきました。 たとえば、お酒やウイルスは確かに明らかなリスクです。 しかしこれに加えて、近年C型肝炎ウイルスを消せるようになりわかってきたのは、を合併している人は肝臓がんができやすいということです。 肝硬変があると「インスリン抵抗性」が生まれ、糖代謝異常が起こることは以前より知られていました。 メカニズムの詳細はまだ分かりませんが、糖尿病の方は肝臓がんを合併しやすいため、注意が必要です。

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